「川ガキ 山ガキ」という言葉を体現していた少年時代の私にとって、家の近くを流れる里川は、最も身近で大切な遊び場だった。
冬、その支流・法子沢の上流に出来る幾本ものツララは、天然のアイスキャンディーに早変わりした。寒さが一層厳しくなり、里川の本流が凍る「シガ」がやって来ると、子供達は拾ってきた棒切れで我先に水面の氷を割っては大はしゃぎをする。川岸を淡いピンクに染めた桜の花が若葉に変わり、その緑がますます色を濃くする頃、トンボの羽化の時期になる。登校途中で偶然その瞬間に立ち会い、神秘的な生命の不思議に息を殺して見入っては遅刻をした事も、一度や二度ではない。夏の太陽が照りつける下、男子は皆、漁師に変貌し、テストの点数より重要な漁獲高を宿題の日記に書き込むのだ。秋には大きく育った鮎を食卓に並べて、得意顔をしていたこともあった。
子供達にも、こんな「スローな」時間を体験し五感を存分に刺激することで、心の豊かさと生きる力を育んで欲しい。